NONLECTUREの持田剛による企画会議
Part 2


西山徹(以下TET)
オープンおめでとうございます。その後のギャラリーの反響やブックショップの動向はいかがですか?展示のスケジュールも埋まってると伺いました。
持田剛(以下MOCHIDA)
ありがとうございます。現在は店内を大きく三つのゾーンに分けて運用しています。階段を降りて正面に見えるメイン壁面、柱側のサイド壁、それから中央の可変スペースですね。メイン壁は今回で三回目の展示が終わったところで、ポスター側の展示もちょうど終了するところです。今週末から月末にかけては、GQ JAPAN※1さんのイベントに合わせたポップアップ展開も予定しています。ありがたいことに、オープンしてからかなりテンポよく動いていますね。
TET
素晴らしい。すでにちゃんと回ってますね。
MOCHIDA
いや、まだ試運転ですよ(笑)。でも、エリアの性格はだいぶ見えてきました。メイン壁は来場してすぐ目に入るので、とにかくインパクトが強い。会期は二週間くらいの短期集中型が向いています。逆に柱側のサイド壁は一ヶ月から一ヶ月半くらいじっくり見せられるので、販売も含めたコマーシャルギャラリー的な使い方が合っている。テーブルは同型のものが三台あって、バックヤードにも予備があります。Tシャツやプロダクトを前面に出す展開もできますし、DJブースやワイヤレスマイクも常設できるので、イベント対応力は高いと思います。
TET
お店で扱っている書籍や雑誌についてはどうですか?
MOCHIDA
洋書中心ですね。古書は自分のストックや私物も交えながら補充しています。フランスの出版社は比較的充実してますが、円安の影響で価格はかなり上がりました。感覚的には数年前の倍くらいになっているものもある。なので、高額本だけではなく、TaschenやThames & Hudson※2等の小型トレード版みたいなギフトレンジも意識しています。贈り物にも自分用にも手が出しやすいものですね。雑誌もまだ色々調整中で、『THRASHER MAGAZINE』※3なんかも毎月少量ずつ入れています。
TET
本もトレーシングぺーパーでラッピングしてあって丁寧だし素敵ですよね。
MOCHIDA
ビニールで密封すると、急に商品サンプルっぽくなるんですよ。だから半透明のペーパーで包んだりして、保護しつつ、表紙の見え方も損なわない方法を探っています。あと、「花を贈るなら花の本も一緒にどうですか」とか、本を生活の用途に繋げる提案もしたいんです。


H鋼の柱がアクセントになった店内を回遊しながら持田さんの案内に聞き入る
TET
前回の会議の後、STUMPのチームでもどんな展覧会が良いのか話し合いました。 持田くんのアイデアでもあった印刷物の制作やそれに伴う展示は、前回話にも上がった「PHILOSOPHY ZINE」をフィーチャーするのか、その場合は「STUMP MAGAZINE」としての立ち位置はどこにあるべきなのか? 昔話ではなく今これからの「STUMP MAGAZINE」として何を伝えられるのか? コンテクストが複雑になってしまわないようにするにはどのような編集が良いのかと色々と話をしました。
MOCHIDA
面白そうですね。あまり振り返るのではなく、今の視点で表現するみたいな。
TET
そうです。昔こうだった、で終わると違うと思うんです。「STUMP MAGAZINE」っていうフィルターを通して、現代にもう一度「PHILOSOPHY ZINE」を作るということを焦点にしたら、どういうものができるのか。そもそも「PHILOSOPHY ZINE」の前進である「PHILOSOPHY STORE」をスタートしたのは、すでに活動していたブランドの服作りの背景にあるものは「考え」からやってきていることだと伝えたかったからです。その「考え」とはさまざまなカルチャーからの影響が多大で、そのカルチャーを共有しておきたいという考えたからなんです。
MOCHIDA
その感覚、すごく大事だと思います。「PHILOSOPHY STORE」って名前だけ聞くと、思想の展示みたいに感じるけど、実際にはもっと感覚的で、編集的な場所だったじゃないですか。だからそれをそのまま再現するより、STUMPという現在進行形の媒体を通して表現するのいいですね。
TET
少し続けると「PHILOSOPHY STORE」という店舗から「PHILOSOPHY ZINE」というメディアに進化したことは、ビジュアルと活字を使ってコミュニケーションするようになったわけです。ですからその文脈を辿ると活字を展示して来場者の方々とコミュニケーションをとるといいのかもしれないですね。
MOCHIDA
かなりいいですね。日本語の活字であえてやるのもいいと思います。
TET
あまり説教臭くならないようにしながら(笑)。


NONLECTURE books/artsの店内ではSTUMP MAGAZINEのプロダクトを販売中
MOCHIDA
そのバランスですね。メッセージとして、少し笑える余白があるといいですね。展示物としては、書籍やZINEだけじゃなくて、エフェメラ※4と言うか、ポスター、フライヤー、チケット半券、ステッカーとか。あとは昔のAV機器なんかも混ぜたらどうでしょう。ミックスメディア的なニュアンスで。
TET
面白いと思います。ただ、単なる懐古趣味にならない塩梅が必要ですね。
MOCHIDA
そこなんですよ。それと余談になりますが、映画『PERFECT DAYS』※5って、時代考証の話題もいろいろありましたよね。あの作品って、明確に何年設定ですと言っていないのに、カセットテープがあって、古本屋があって、スマホが希薄で、でも現代の東京でもある。ちょっとそこにモヤモヤしたものを感じて(笑)。
TET
分かります。時代考証ってすごく大事ですよね。
MOCHIDA
展示も同じで、90年代の物を並べるだけでは資料展になる。そうじゃなくて、今の視点で再配置することで初めて意味が出る。だから西山さんの私物の本も、単なる中古品ではなく、線引きや付箋、ドッグイヤー付きの本をそのまま展示していたら、それはその人の思考履歴じゃないかなぁと。そこに価値があると思うんです。そういう読み跡込みで展示したいです。「ここで止まっていた」「ここに反応していた」が見えると面白い。
TET
それ、STUMPっぽいですね。完成品よりプロセスを見る感じ。
MOCHIDA
なので、個々の出品物に小さな目録を付けたいです。なぜこの本なのか、なぜこの媒体だったのか、その時代に何を見ていたのか。古書目録みたいに短い文章で。
TET
いいですね。会場で読めるし、持ち帰ってもいい。
MOCHIDA
QRコードも併設して、誌面やオンライン記事に飛べるようにしてもいい。
TET
少しずつ内容が見えてきましたね。展示のテーマはSTUMPというフィルターを主軸に、「PHILOSOPHY」の深い回顧は避け、STUMPを通じて“今”のメッセージに焦点を当てる。今に繋がる一つのコンテンツと捉えようと思います。
TET
懸念事項を挙げるとすれば、個人フリマみたいになるのはどうかなぁってこと。
MOCHIDA
そこはかなり重要です。西山さんの私物中心に偏るとフリーマーケット感が出ます。なぜ今これを持ってきたのか、どういう時代に手に入れたのか、なぜ今も手元に残っていたのか。そういう背景が見えることで、単なる“物”ではなく、その人の時間や感覚ごと展示できる気がしています。
TET
値札だけだと急に現実に戻りますからね(笑)。物だけじゃなく、その人の記憶まで並ぶ感じですね。
MOCHIDA
そうなんです(笑)。だから値札より先に文脈が必要だと思います。生活の物語があるから魅力的に見えると思うんです。
TET
なるほど。展示も物語を並べる作業ですね。
MOCHIDA
まさにそうです。STUMP MAGAZINEが得意なのもそこだと思います。物を紹介しているようで、実際にはその背景にある態度や時間を編集している。
TET
いい着地点ですね。じゃあ次回までに、物と物語の両方を持ってきます。
MOCHIDA
ありがとうございます。こちらでもスケジュールの調整や展示の方法についても、もう少しアイデアをまとめておきますね。
…つづく
※1 GQ JAPAN 2003年にコンデナスト・ジャパンより創刊された総合男性誌。世界初のメンズファッション&ライフスタイル誌『GQ』(米国)の日本版としてスタート。
※2 Thames & Hudson 1949年にイギリスで創立された美術系の老舗出版社。大西洋に流れ込むロンドンのテームズ川とニューヨークのハドソン川に由来する。
※3 『THRASHER MAGAZINE』 1981年にサンフランシスコで創刊されたスケートボードマガジン。
※4 エフェメラ フライヤー、チケット、リーフレットなど本来長期間保存することを目的としない紙製のアイテム。
※5 映画『PERFECT DAYS』 2023年に日本・ドバイ合同で制作、ヴィム・ヴェンダース監督が東京を舞台に、役所広司演じる清掃作業員の日々を描いた作品。


「NONLECTURE books/arts」
営業時間:11:00-21:00
住所:東京都渋谷区宇田川町16-9 渋谷ゼロゲートビル B1F
公式サイト:https://nonlecture.jp/
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詳細はNONLECTURE公式サイト / Instagramをご覧ください。
持田剛
洋書アートブックの仕入れ、選書、国内外の作家の写真展、アートエキシビションのキュレーション、出版イベント、サイン会等のアレンジを広く行う。1998年よりタワーレコード渋谷店7Fにあった「TOWER BOOKS」のマネージメント、2008年より「代官山蔦屋書店」準備室の洋書仕入れ、2014年よりファッションブランド「MARC JACOBS」が手掛けるブックストア「BOOKMARC原宿」のディレクションを行う。2026年3月、渋谷スペイン坂に「NONLECTURE books/arts」を開業。
photo: Tomohiko Tagawa
text: Nobukazu Kishi