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土地を守り、継ぐ。 Interview with Keola Rapozo
FITTEDのケオラがハワイでやっていること。

日本人はハワイが好きだが、ほとんどの日本人が知らないハワイがある。それは、私たちの親友であるFITTEDのケオラ・ナカアヒキ・ラポーゾが参画者のひとりとして名を連ねる、オアフ島カネオヘにある「Kāko'o'Ōiwi」(カコオ・オイヴィ)。ハワイ語で「ネイティブハワイアンを支える人」という意味の非営利団体で、「すべてのハワイの人たちが、ハワイのものを食べて、ハワイでちゃんと生活ができるように」という自然と文化の継承を長い時間をかけて形にしようとしているプロジェクトだ。この土地に生まれ、育ち、守り、また次の世代がこの地に根をはり、決して、この土地が開発されないように。この「Kāko'o'Ōiwi」という場所を守るために、「'Ai」(アイ/食べ物)と「'Ike」(イケ/知識)を育て続ける。メインの建物を抜けると正面に広がるのはワイルドなハワイ。雲がかかっているあの山は「転がるネズミ」と呼ばれているそうだ。

「私の叔母たちや家族が何世代にもわたりこの土地を守ってきました。土地を管理する理事会の会長が叔母で、彼女に『今こそあなたが率先してこのプロジェクトを引き継ぎ、参加するときだ』と言われ、関わるようになってから10年以上経ちましたね。この土地は404エーカーあり、その一部は“Kuleana(クレアナ/責任)の土地”、または“受け継がれた家族の土地”とされています。この地域で生まれ育ったので、私のKuleana(責任)はこの土地に関わり、働き、自分のスキルをこの運営にどう役立てるのかを日々考え、実践することです。最初にこの土地を受け継いだときはコンテナが一つあるだけでした。それから何年もかけて、どんなシステムを作るべきか、何が応用できるかということを話し合いながら一つひとつ積み重ねてきました。自分にとっては自身の仕事であるデザイン理論や先住民の知恵、技術をどう現代的に再解釈して生かせるかという挑戦です。生産施設、洗浄パック、冷蔵施設、'Āina(アイナ/大地)の再生と栽培。農地を耕し、タロイモ(ハワイ語でカロ)を育て、収穫し、ここで調理し、伝統的なハワイアンフードPoi(ポイ/タロイモ料理)の加工も行います。それから、金曜と土曜にはオープンマーケットを開きます。収穫したものをここに持ち寄り、みんながここへ車でやって来て買っていくんです」

ハワイには、古来よりAhupua'a(アフプアア)と呼ばれる、山から海までの土地をひとつの単位とした土地区分の概念が根づいている。アフプアアの区域では自然と共生しながら土地資源を循環させて自給自足を行う仕組みがあり、山にかかる雲が雨を降らし、流れ出る水が土地を潤し、農業と漁業を支える。この地で伝統的な主食とされてきたのが、古代ポリネシア人が運んできたカヌープランツの一つ、タロイモである。ハワイアンにとって先祖との精神的な繋がりを象徴する食材であり、「Hāloanakalaukapalili」(ハーロアナカラウカパリリ/風に揺れるハーロアの葉)、つまり最初のカロ植物である。かつてはハワイ各地で盛んに栽培されていたそうだが、「Kāko'o'Ōiwi」ではタロイモ畑の復興を通じて、この湿地の生態系を保全し、農地として開拓。ケオラに食べさせてもらったのは、蒸したタロイモをすりつぶしてペースト状にし、ココナッツミルク、ローシュガーを混ぜ合わせたKulolo(クロロ)というデザート。甘いお餅のような、ういろうのような味わいだった。

「ここではクロロをはじめ、クロロクランチというホイップクリームとマカデミアナッツでつくる一番人気のもの、地面に掘った穴を利用した伝統的なオーブン、いわゆるImu(イム)で調理した豚肉のカルアピッグ、それからマッシュルームといったものがラインナップされ販売されています。羊も飼っていて、これから食肉加工施設も建てる予定なんです。花を植えて、レイをつくっていたりもします。私たちの世代ではこういった活動をしながら、この土地に意味をもたらします。もともとはマングローブが生い茂っていたせいで、山からの水が海に流れ出ずにいたのを5年ほど前に整備しました。海水がバクテリアをつくるので水の行き来、循環はとても大事なのです。50年後にはこれらはすべて次の世代に引き継がれます。願わくば、組織内で子どもたちが継ぎ、そのまた子どもたちが継いで、ここが地域と共存する生活拠点になると嬉しいです。私たちの目標は、「'Ai」(食べ物)と「'Ike」(知識)を届けることです。ハワイのもの、この土地のものを食と知識をとおして伝えます。土地を再生することは人々に知識を届けることでもあると思います。私たちの使命の一つは人々を教育することです。観光客、子ども、大人、誰でもです。だから土曜日には施設を開放してワークデイを行なっています。ウェブサイトから登録すれば、たとえば、休耕地を片づけたり、新しく苗を植えつけたりと、誰でも来て作業できるんです。午前中に作業して、そのあと一緒に食事をします。それが毎週土曜日の活動です」

伝統的なハワイアンフードのポイはタロイモが原料だ。

ケオラは20年前にFITTEDというブランドを立ち上げ、ハワイの文化、アロハの精神をアパレルにのせて伝えている。店はハワイに行けば誰もが訪れるアラモアナショッピングセンターのすぐ脇にあるが、観光客は少なくローカルたちが買いに来る。地元の人たちがハワイを誇りに思えるショップなのだろう。ベースボールキャップにはカメハメハ大王やハワイ州旗、トラッカーキャップにはダイヤモンドヘッド、ハワイローカルのスリッパSCOTTと一緒にものづくりをしたりと、「ALOHA SERVED DAILY」がその神髄にある。そんなケオラだが、このプロジェクトを始めたことで、自身の人生にも変化をもたらしたという。

「ここにいるのは自分の核になる部分、つまり祖先との繋がりを再確認するためでした。今この'Āina(土地)に立つことで、先人が持っていた円観的な視点を実際に見ることができるんです。娘が2歳のときに一緒に植えたウルの木が8年後に実をつけ、今では高さも20フィート(約6メートル)を超えるまでに育ったのを目にすると、よりリアルな形で“Source(源)”に戻ることができる。リサーチしたり、本や古いMo’olelo(モオレロ/ハワイの物語、歴史、知識を伝える口承伝承)を読んだりすることは素晴らしいことですが、ただここに来て何かを植えたり、カヌーを漕いだり、料理をしたりすることが大事なことであると気づかされます。はじめて自分たちで植えたウルを収穫してウルパンをつくったのですが、すごく感動しました。自分たちのマーケットを開くことが夢でしたが、今では週2回開催しています。コンテナから始まりましたが、今では建物があります。建物は自分たちで設計し建てました。仲間のブレインは、私がおバカなアイデアを思いつき話すと、彼はそれを構築する方法を見つけてくれます。なんでもつくってくれるのです。この土地から“Source(源)”を得るだけではなく、身近な人たちからも“Source(源)”を得ているんです。TETもそうです。人生の中でMaka'ala(マカアラ/注意深く気づいている)とか、あるいはMa'a(マア/理解している)という人に出会えると、こういった話を自然に受け入れてくれるんです。そうすると、一緒に枠組みをつくっていくのが簡単で楽しくなるんです。TETと一緒に座って話すたびに、これが私の好きなことだと気がつきます。私たちはデザインの話はせずにストーリーを語ります。これまでも何年も一緒にただ座ってストーリーを話してきたことが、私が得た最大の収穫だと思います。製品も何もありません。私たちはただストーリーを語り、その時間を楽しんでいるのです」

これがケオラが娘と植えたというウルの木。

山の上にはベッタリと雲がはりついている。海からの湿った風が山にぶつかり恵みの雨を降らしている。太陽が時折のぞけばジリジリとした光が肌を焼く。「Kāko'o'Ōiwi」は海もすぐそこにある。ケオラが運転するバギーに乗って、この404エーカーの土地をぐるりと一周ツアーした。その途中の水田で作業をしていた男を紹介してくれた。それはリンジーというフードサイエンティストで、現在のハワイではなくなってしまった米の栽培を研究している。

「リンジーは長年、Nobuレストランのエグゼクティブシェフを務めていました。ラスベガス、ロサンゼルス、ワイキキを経てワードビレッジでのオープンの頃に『もういい』と、人のために料理するのではなく、彼の情熱の源に戻る決心をしました。なので、今のように一つの目的に集中することができているのです。日本語で一つのことに専念する概念があったと思います。そう、たしかWTAPSの理念で、TETが言っていた、『Placing things where they should be.』(物事を本来あるべき場所に置く)ですね。リンジーは、19世紀半ばからハワイで始まったとされている米づくりをあらためて模索しています。ハワイで最も重要な食用作物であるにも関わらずお米は今は栽培されていないんです。マッシュルームの導入にも彼は重要な役割を果たしてくれました。革新的なフードアイデアのほとんどはリンジーからのものです。「Kāko'o'Ōiwi」の一員ではないけれど、大きな存在です。私たちはコンテナの屋根の下に座って、『ここで何ができる? できない?』と考え込み、いろいろとアイデアを言いあっては形にする方法を探ってきました。ブレインもリンジーも昔からの付き合いです。同じ水を飲み、同じ食べ物を食べてきました。カネオヘは小さな場所です。大きいけれど小さい。同じ関心があると、自然と集まってくる。音楽や文化的なライフスタイルが私たちを結びつけ、そのあとに食とデザインが私たちを友情へと導きました。デザインの構築を一緒にやったり、アートをつくったり、車を造ったりもします。地元の高校の塗装ブースに30年置き去りにされていた古いポルシェを見つけ、たしか911だったと思いますが、復元してまた走れるようにしたんです。家具もつくったし、レストラン、カカアコにある私のオフィスも一緒につくりました。すべてDIYです。土地も機械もたくさんあるので活用法を増やし、鍵となるものを見つけ、「'Ai」(食べ物)と「'Ike」(知識)で人々を養う。それがミッションの一部です。今の社会は資本主義に躍らされ、人より多く何かを得る方向に流れがちですが、ここはそうではありません。善いこと、正しいことをするのが使命です。最も大切なのはこの土地は、人々、コミュニティのためのものだということです。私たちはただ一瞬存在しているだけなんです。私たちが終わったら次の誰かが来る。そうしたら次へ渡す。叔母がしてくれたように、私も責任を持って見守り引き継ぐのです」

ハワイでまたお米がつくれるように研究を続ける元シェフのリンジー。水田の畝に巣をつくる'Io(イオ/タカ目タカ科のハワイノスリ)が、ライスバード(文鳥のこと。ハワイには野生の文鳥がいる)から稲を守るのだそうだ。

ケオラはこの場所から800メートルくらいのところで育った。街へ出て、事業を起こしブランドをつくるまでは、人生のほとんどをこの土地で過ごした。当然、DNAもここにある。FITTEDと「Kāko'o'Ōiwi」が双方うまくいくためには、奉仕と仕事のバランスが大切になるという。FITTEDは家族の生計を支える仕事だ。アートや家具づくりを行う個人プロジェクトの「MAKE READY」、「FADS」というインハウスのデザイン会社も抱え、Hawaiian Airlinesのような大きなコーポレート案件も扱っている。その代わり、「Kāko'o'Ōiwi」に関しては無償で奉仕を行なう。

「実はつい最近、ハワイアン航空とアラスカ航空が合併するにあたって、大きなプロジェクトやったばかりなんです。それで合併のためのビジュアルアイデンティティを担当しました。面白い話ですが、私の好きなManu(マヌ/鳥)の一つにKōlea(コーレア/ムナグロ)がいるんですが、今日もKōleaのキャップをかぶっていますけど、ハワイアン航空からこの合併をどうビジュアルに表現できるか、参加してくれないかと声をかけられたとき、すぐに私の頭に浮かんだのがKōleaでした。Kōleaはハワイで8ヶ月過ごして、その後アラスカへ渡って繁殖し、ヒナを育ててまたハワイに戻ってくるんです。それも一羽だけではなくすべてのKōleaが同じ時期に一斉に移動します。そしてさらにすごいのは同じKōleaが毎年同じ場所に戻って来て、一生その場所で営巣するということなんです。Kōleaがデザインベースになり、そのロゴは社内外のあらゆるコミュニケーションに使われました。合併をどう伝えるか、その中心にあったのがKōleaとその飛翔のストーリーだったんです。もう一つ面白いのは、Kōleaはアラスカにヒナを残すのですが、そのヒナたちが一気に飛んでここハワイにやってくること。まるで自然のGPSのように迷わず場所を見つけるんです。海の下ではPalaoa(パラオア/マッコウクジラ)が、そして空の上ではKōleaが同じように南北を行き来しているんです。Mo'olelo(物語)をどのように共有し、人々が思い付かないような方法で提示できるのか。深く知りたい人がいればそれでいいし、そうでなくても見た目がよいグラフィックとして楽しめます。でも、その背後には物語があること。それが、私がここにいる理由の一つだと思います。先日もKōleaを一羽見かけました。8月の終わり頃になると彼らはアラスカから渡ってきます。4月にまたアラスカへ戻ります。色が金色から黒に変わります。黒になると少し太るのですが、太平洋横断の長距離飛行に備えて準備が出来た合図となります」

「Kāko'o'Ōiwi」の建物の向こうには、大きな山が見える。その山の名前をケオラに聞くと、あれは「転がるネズミ」だと教えてくれた。

「島のこちら側のネズミと、島の向こう側のネズミが戦ったという面白い話があります。地元のネズミたちはEwa(エヴァ/オアフ島西部)のネズミが作物を盗んでいることに気づき、尾根で捕まえて近道に誘導することにしました。地形に不慣れなEwaのネズミたちは滑って斜面を転げ落ち、底の水たまりまで転がり落ちていきました。それを見て地元のネズミたちは笑い、そのためにこの山は「転がるネズミ」と呼ばれているのです。ネズミの足の色でどこから来たかがわかるとされており、赤い足のネズミはEwaのMoku(モク/島)から、一方でKo‘olaupoko(コオラウポコ/オアフ島東部)のネズミは綺麗な足をしているのです。あっちの山もですが、この一帯にはMo'olelo(物語)がたくさんあるのです。私たちのこの土地は、HCDA(ハワイコミュニティ開発局)の州有地です。現在は38年のリース契約なのですが、60年に更新できないかを交渉中です。叔母たちは70年代、80年代に開発業者がここをマリーナにすることを阻止した運動に参加していました。ここはHawaii Kaiのようなマリーナになるはずでした。私たち「Kāko'o'Ōiwi」は、この土地の再生に奉仕するためにここにあり、きちんと仕事をすれば開発されることはありません。ローカルを雇用し、ローカルのフードをローカルに食べてもらうために。それが50年先への私たちのミッションなのです」

Keola Rapozo

ケオラ・ラポーゾ | ハワイ生まれ。ネイティブハワイアンで、ハワイのローカルブランドFITTEDの共同オーナー。ホノルルのマックカリー-モイリイリ地区にあるピッツェリア『'ili'ili Cash & Carry』や非営利団体「Kāko'o'Ōiwi」のディレクターの一人。アートや家具づくりを行う個人プロジェクトの「MAKE READY」、大きなコーポレート案件を扱うデザイン会社「FADS」も運営。7月から1年間限定で、ワイキキにスーベニアショップ『IN THE SOUTHERN SUN』もオープン。
fittedhawaii.com

Kāko'o'Ōiwi

カコオ・オイヴィ | オアフ島ヘエイア・カネオヘを拠点に、2009年に設立した非営利団体。現在、HCDA(ハワイコミュニティ開発局)と38年間のリース契約を結び、ヘエイア湿地帯にある404エーカーの農地再生と環境的生産性を回復する長期プロジェクトを実行中。カコオ・オイヴィは文化、教育、生態系回復プログラムをとおして、地域コミュニティの社会的・経済的発展を促進。その使命は、ネイティブハワイアンの文化的・精神的慣習を永続させること。
kakoooiwi.org

photo: Taro Hirano

text: Tamio Ogasawara

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