Culture Club
次につながって。 By TET
カルチャーで育った僕らが、カルチャーについて語るコーナー。一回目は音楽をとおして世代が繋がることについて、ディレクターのTETが話をします。

娘が10歳の頃、シンガーソングライターのテイラー・スウィフトに入れ込んでいた時期がありました。
ライブには2回ほど。とても有名ですし、アメリカのミュージシャンなので当然僕も知ってはいました。カントリーソングのカテゴリでいくつも賞をとっていて、グラミー賞は何度も受賞していたので知ってはいましたが、 自分のプレイリストに入っているほどではありませんでした。

大好きなGoldfishをプールサイドにて。2023年ハワイ。

娘はダンスをするようになり、自ら音楽も聴くようになって、BLACKPINKを始め、NEWJEANS、TWICEといったK-POPからプレイリストができ始めていましたが、テイラー・スウィフトのようなアメリカンシンガーソングライターは初めてのカテゴリー。
次第に、そういったカテゴリーやジャンルも加わるようになっていくのだなぁと思っていたのです。
僕は、「自分の好き」をあえて子どもたちに推すことはしてきませんでしたから、「ふむふむ、そういうのならパパは詳しいぞ」とどこか微笑ましく感じ、嬉しく思っていたのでした。
それからしばらく経った頃、66回目だったと思います。
例のグラミー賞に僕が大好きだったトレイシー・チャップマンが出るよ!
というのを聞いて、楽しみにその時を迎えたとき、待望のトレイシー・チャップマンの他に、ルーク・コムズという白人のカントリーシンガーと『Fast Car』を披露したのです。『Fast Car』というのは、トレイシー・チャップマンの88年のファーストアルバムに入っていた曲で、僕が高校生だった頃によく聞いていた曲。大好きだった先輩が持っていたレコードがきっかけでした。

ですので、その曲が演奏されるだけでかなり込み上げるものがあったのですが、白人カントリーミュージシャンとのデュエットという様子にも、考えさせられるところがありました。でも、もっと驚いたのは、パフォーマンスする二人を映しているカメラがそうそうたる有名人が着席するオーディエンス側に切り替わったとき、例のテイラー・スウィフトが映しだされたのです。カメラは一人席を立って、リスペクトの眼差しでステージを見ながら演奏に合わせて歌って踊る彼女を映し出しました。それは世代から世代へと受け継がれている在り方と思えましたし、僕が好きだったアメリカのそのものでもありました。
音楽という誰もが触れることのできるカルチャーは時代も世代も人種も性別も飛び越えるパワーを持ってることを改めてみせてもらえてとても清々しい気分でした。

これまで、あえて「自分の好き」をこどもたちに推すことはしませんでしたが、もしかしたらテイラー・スウィフトが大好きな娘に、大昔に自分がウォークマンでよく聴いていたトレイシー・チャップマンを知ってもらう機会になるかもなって。あれだけのスーパースターが着席する会場で一人席を立ってステージに向かって歌い踊る姿は、いろんな形で影響を与えたと思うのです。

だって、何十年も前に大好きだったトレイシー・チャップマンの『Fast Car』を現代のミュージシャン、しかもカントリーシンガーのルーク・コムズが歌っていたのをみて、今のカントリーを聴いてみよう!と思った自分もいれば、時代のアイコンでもあるテイラー・スウィフトを通してトレイシー・チャップマンという最高のミュージシャンを知ることができた11歳の子もいるんですから。

パリ・ファッションウィーク、Under Coverのショー、リハーサルを見学。2024年パリ。