Feature
古いTシャツを見て、
旅に出る。
Supported by
Good Valley Market
古着の価値観って、自分の物差しひとつで変わるところが楽しいんです。

東京・原宿にあるDescendant Tokyo内の「Den」と呼ばれるスペースで、「Den」のキュレーションによるポップアップを開催します。第一回はUSの古着をコレクションするウェアハウスGood Valley Marketのサポートを得て、今年5月に仕入れたばかりのユーズドTシャツから「Den」の見立てで130枚ほどセレクトし、展示販売。そんなイベントをとおして、少し古着について考えてみたいと思います。


古いものをセレクトして販売するのは、僕たちにとっては初めての経験です。

誰かがつくり、どこかで売られ、一度は生活の一部になったものが集められたTシャツの山からセレクトを行い、新しい価値観の提案とともにふたたび世にリリースするというのは、自らブランドをつづけてきた自分にとっては新しい感覚です。古着屋さんがふだんやっていることを見よう見まねで行うわけですが、服をつくりつづけてきたからこそ見えてくるものがありました。

ブランドがつくる服も、古着の服も、同じ服ではあるのですが、アプローチはまったく異なります。ユーズドのTシャツであれば、生地の厚みや縫製、カラー、シルエット、プリント方法も描かれるグラフィックもすべてが一点ずつ違うもの、つまりバリエーションの深さがあるほどに面白さが増すのだと思います。一方でブランドのものは、作家性、毎シーズンごとのテーマにちなんだクリエイション、要であるシルエットやアートワークの提案がブランドアイデンティティとなるので、印象や手に取る動機がまるで違ったものになるのです。

古いTシャツの山から一枚一枚めくっていく。これまで見てきたこと、経験してきたことが頼れる瞬間です。「教養はないけど、好きなカルチャーを体現し、経験したことで、見る目は養われてきたはず。それだけは自分のものとして持っている」という観点でセレクトしました。

ユーズドというポイントは時を経てきたこと。一度デビューしたことにポイントがあると考えています。選んだTシャツは、デビュー当時、新品で出会っていても気にも留めないものがほとんどです。セレクターである自分が重ねてきた経験をもとに、セレクトのテーマ性が定まり、当時の自分とは関係のなかったものもストーリーの中で役割が与えられラインナップされています。ほかにも、あらゆる年代のさまざまなアートワークを見ていくにつれ、時空を超えて旅をしている気分になることで、家族や友人へのお土産のつもりでセレクトすることも手段の一つとなりました。

左から、ニューヨークのM DeVriesというコンクリート会社のTシャツ、ちょっとマティスなジャマイカのTシャツ、メリーゴーランドTシャツはカーニバルのスーベニアのイメージで。Vail COLORADOのTシャツは何人か着ていそうな友人が思い浮かんだり。ちなみに、Vail(ベイル)は北米最大級のコロラドにあるスノーリゾートです。

左から、新品だったら手に取らなさそうなカワハギのTシャツ。釣り好きな男の子に。ピンクのTシャツはアメリカらしい信仰の厚い一枚。右は、ニューヨーク市の地下鉄やバスを運営している公社New York City Transit AuthorityのTシャツ。90年代後半によくニューヨークのMTAミュージアムを訪れていた頃に売ってそうな一枚。

これまでのユーズドTシャツの価値観とは異なるセレクションです。今回はTシャツですが、ユーズドの面白さって、そのモノと自分との接点が見つかったときに、自分の価値観で素敵な一品になってしまうところなんだと思います。人の物差しで選ぶのではなく、ちゃんと自分の物差しを持つことで楽しくなるのかなと。

今回のポップアップは、Descendant Tokyoの中の奥のスペース「DEN」で行われます。「DEN」とは独自の観点で「今あるもの」をコレクションし発信を行う、いわばギャラリーのような役割を持つスペースであり、キュレーターであり、活動の場です。「DEN」は今回が初のお披露目で、雑誌POPEYEの古着特集にも登場したUSのユーズドをコレクションするウェアハウスPTC VINTAGE CLOTHING WHOLESALEのディレクターのひとりである大久保宏史さん協力のもと、入荷したばかりのユーズドTシャツの山から「DEN」の見立てで選び抜いた130枚が展示販売されます(キャップも15個ほどあります)。当日のイベントには大久保さんが「DEN」の学芸員のような役割で在廊します。ちなみに、大久保さんはかつて南青山にあったセレクトショップBlackflagの元店長なんですよ。

ボディのタグは最後に見て、時代と品質を確認するくらいで。Aggie’s ICE CREAM & GRILLはノース・カロライナ州シャーロットにあったレストラン。
ボーダーの好みは、80、90年代頃の配色、太さ、ピッチの感覚的な記憶によります。真ん中の一枚は80年代の頃に同じものを着ていたかも。
ブランクのボディも集めてみました。今の気分はありのままの古いままで。ブランドもフィットもまちまちで、色もばらばらなのが古着のよさですね。
キャップはバイカラーのものを中心に。王道のバイカラーですが、いざ探すとなかなか見つからないのもバイカラー。

ONE'S Own Values

日程:8月9日(土)、10(日)、11(月)13:00〜19:00
場所:Den in Descendant Tokyo
住所:〒150-0001 東京都渋谷区神宮前6丁目6-11

当日はGood Valley Marketの大久保宏史さんがいらっしゃいますので、ぜひみなさん話しかけてみてください。

photo: TET

text: Tamio Ogasawara