Feature
スケーター? 現代美術家?
僕らの山ちゃんは
アメリカへ行った。
Part 3
Who is Tetsuya Yamada?
Interview by Takei Goodman
Part 2からの続き)
映像作家・タケイグッドマンさんによる、現代美術家・山田哲也さんのインタビューの最終話。

Takei Goodman(以下、Takei)

山ちゃんはふだん、どういう一日を送っているの?

Tetsuya Yamada(以下、Yamada)

時間があったらアトリエにいます。

Takei

朝は何時に起きてるの?

Yamada

通常6時頃だね、起きて子どものお弁当をつくったり。

Takei

炊飯器あるんだ?

Yamada

鍋で炊いているの。あと、妻の朝食もつくってね。

Takei

家事担当だ。山ちゃんは大学には毎日行っているの?

Yamada

家事はまあできることはやるようにしています。基本的にキャンパスには週2日。2クラス教えていて、でも職員会議などがあったり、大学院生と会ったりすることもあるので、週2、3日はキャンパスにいます。

Takei

いい環境だね。アトリエはどこにあるの?

Yamada

大学が提供してくれているスペースがあります。科学者と一緒だよね、自分のラボがある。

Akeem

作品の材料は?

Yamada

材料はいろいろなところから手に入れます。資源は大学からのグラントが主ですかね。たまに大学以外のものもあります。

Akeem

申請したら助成金が出るんだね。

Takei

おー、アキーム。そういえば、山ちゃんはティファニーからもファウンデーションされたりしていたよね。今は?

Yamada

2023年のグッゲンハイムのフェローシップは大きかったね。活動のサポートをしてもらえたかな。

Takei

そういえば、今回の来日はエデュケーションの一環で、生徒たち10人くらい連れて、京都をまわったりしてたんだもんね。ふだんの授業は何時から何時までなの?

Yamada

今回はグローバルーセミナーという3単位コースで、3週間学生と日本に滞在していました。いろいろなところへ行って、いい経験ができましたね。大学では通常、各学期2クラスを教えていて、各クラスは2時間半で週2回です。午前は9:05から11:35。午後は13:25から15:55。通常初級が朝で、中級、上級が午後ですね。

Takei

セラミックを教えているの? それともペインティングとか?

Yamada

セラミックがバックグラウンドだし、基本的にセラミックで採用されているから大学のクラスはセラミック。大学院生は個人に合わせてマルチメディア。

TET

昔に比べて学びたい人は増えているの?

Yamada

セラミックはいつの時代も人気あるよ。初級は。

Takei

15:55に授業が終わって、そこから職員室に行かないで帰るの?

Yamada

いろいろだね、単位とっている大学院生と会ったり、自分の工房に行ったり、会議があったり。

Takei

授業がない一日は?

Yamada

朝から工房に行きますよ。

Takei

脚本家の山田太一さん、漫画家の藤子F不二雄さんとかは、どんなサイクルで仕事をしてもいいのに、社会のリズムと繋がっていたいときっかり9時17時で働いていたらしいよ。

Yamada

そういうこともありますね。

Takei

つくる上でルーティーンはある?

Yamada

そのとき何をつくっているかで変わってくるけど、常にスタジオに行ってやることないのが嫌いだから、先を考えて、次の作品のプランを立てたり、アイデアを考えたり。

Takei

どういうプロセスを経て作品が出来上がるの? それぞれ違うかもだけど、たとえば、このスケートパークのセラミックの作品は?

左 / “Model for Skatepark 1,” 2021。焼成粘土。 18.5 × 16.5 × 2.5 インチ。右 / “Model for Skatepark 2,” 2021。焼成粘土。 19.75 × 16.75 × 2.75 インチ。
撮影:Caylon Hackwith
©Tetsuya Yamada and Midway Contemporary Art

Yamada

ミネアポリスのヘアーアンドネイルストいうギャラリーで個展をした際に、スケートボードの経験を生かした展覧会をしたいと思ったのがきっかけ。

Takei

最初からこれが頭にあるの? それとも粘土をこねながら思いつくの?

Yamada

場合にもよるけど、通常最初は頭の活性を含めてスケッチをするかな。それで小さいものつくるときもある。それから、もう少し大きいものをつくる。複雑なものは制作過程の計画を立てるのも重要になってくるからね。

Takei

土にこだわりはある?

Yamada

多少はあるけど、こだわっている人に比べたらそうではいないかな。でもいざとなるとこだわるかな。

Takei

土も日本とアメリカでは違うよね。

Yamada

日本の場合は伝統的にいうと、土はその場所で取れるものが多い。地域によってはそんなに粘り気がないものもあったりして、そういう意味ではつくるものを左右する。でも、今は調合が多いみたい。たとえば、益子は家もたくさん建っちゃって土が掘れないから、信楽からの土と調合していると聞きました。

Takei

アメリカは?

Yamada

調合ですね。粘り気を入れようとか、もっとコントロールされている。

Takei

科学やテクノロジーは入っているの? それとも有機的に?

Yamada

まあ科学の裏付けで調合というのが基本だね。

Takei

土は地球のものじゃないですか? 地球を感じながらやる?

Yamada

それは大事な概念だね。

Takei

土ってすごいものじゃない。1cm積もるのに100年くらいかかるって。

Yamada

まあいろいろな風化過程や水の流れで粘土が集まったり。

Takei

アフリカだと1cm積もるのに1000年かかるらしいよ。土は地球の皮膚みたいなものだし、そんな大事な土を手で触ってつくっているわけだからね。

Yamada

土って焼成しちゃうと土には戻らないからね。焼成するとガラスに近い成分になっちゃう。だから、古いものだと1万5千年前のものが見つかったりするでしょう。鉄(アイアンエイジ)や銅(ブロンズエイジ)は腐るけど、土器は腐らないから何万年も残る。

Takei

だから土器が出てくるのか。

Akeem

山ちゃんのスケートパークの作品もうちらよりも残りますね。

Yamada

タイムレス。何万年と残るものだから、地球と人間がまだ存在したとして、何万年先の将来の人間が見たらなんと思うだろう? なんて、学生にはいつも言っているね。そういうものを私たちはつくっている。

Takei

マテリアルはやりたいことで使い分けるの?

Yamada

そうですね。土を触りたい、筆で描きたいとか物質的な欲望もあるし、アイデアをベースとした場合もある。物理的なものも、時間も関係ある。たとえば、夏休みは時間があるから、時間がかかるものがつくれるけど、学校があるときは途切れるから難しかったりね。

Takei

生徒たちに教えるのに大事にしていることって何?

Yamada

その人の人間性をどう理解して、その上で、どの形でいちばんサポートできるかを考えているかな。日本の昔の教育のように一方通行ではなく、生徒が少しでも自信が持てる機会を探す。小さくてもいいから自信をつけてあげる。少しずつつけてあげると、1学期終わるとけっこう成長している。

Takei

素晴らしい先生ですね。自分の娘さんたちにはどうしてるの?

Yamada

毎日会っているとなかなかね。学生とは距離があるからそういうことができるのかも。ほんとはそれが理想だと思う。まあできる範囲で努力してます。今の時代、成功ばかり求めて、失敗に対する耐性がない。自信がなくなっちゃったりするから、そこをやっぱり聞いて、励ましてあげる感じかな。一人ひとり違った人間性をどう理解できるかが大切。

Takei

心の声まで聞く。

Yamada

人間性が一番興味あるから。大きくいうと、人間性を育てたい。そこに私のいちばんの興味があるのだと思います。

山田さんの作品がTシャツになったものと、ノックス大学のTシャツ。山田さんの作品集と山田さんが取材されたTHRASHER、山田さんから近況が送られてきたハガキなど。タケイさんが持ってきてくれた大事な私物。

Tetsuya Yamada

山田哲也 | 最近一緒に暮らしているワンちゃん(ケンタッキー州でレスキューされた犬)の名前はメイちゃん。となりのトトロに出てくる姉妹の妹の名前からつけたそう。

Takei Goodman

タケイグッドマン | 最近は時間があればもっぱら、自身で昔撮りためたビデオを整理。

photo: Takeshi Abe

text: Tamio Ogasawara